震災で津波被害を受けた三陸沿岸の多くの土地には、借地権という概念がない。誰かの土地の上に無償か若干の土地代程度で、建物を建てていたわけである。
今、復興を進める上で、これが大きなネックとなっている。土地の所有者が不明であったり、未登記であったりして、改めて建物を建てることが簡単には出来ないのである。また、建てることを了承してもらっても元々借地権がない土地の上に建物を建てるからには土地事情が震災前とは激変した中で、新たに相当の地代を支払わなければならない。裏を返せば、もはや今迄住んでいた土地に固執して、建物を建てることに重要性がなくなっているともいえよう。
震災後5年が過ぎて被災した人たちの高齢化が進み、家を建てる意欲は減退するのも当然である。土地の嵩上げが進まず、まだいつ建設に着手出来るのか分からないところばかりでもある。その上で、土地の所有者との権利調整をして、改めて建物を建てる人がどれだけいるか心配である。