震災機構では、平成24年から被災地の小中学校に修学旅行・学習旅行支援の助成金を送金しています。これまでの11年間で、延べ740校27,144名の生徒さんにお届けすることが出来ました。修学旅行の実施後に報告写真をいただいており、生徒さんの笑顔が弊機構にも温かい風を吹き込んでくれます。小学校の旅行先を見ると、ほとんど東北地方の中の選択で会津若松や平泉が圧倒的に多いことが一目瞭然です。中学校の場合は東京やディズニーランドが群を抜いて多いようです。

そこで、思うのです。昔と違い今は交通機関も発展し、多くの人が短時間で国内の様々な名所に行くことが出来ます。当然、生徒たちも有名な観光地には一度や二度は行ったことのある可能性が高いのではないでしょうか。一方、観光地と言われていないところでも、地域の取組みが活発に行なわれ、行ってみると思いがけない思い出を作ってくれるところも格段に増えています。

そこで、被災地の小学校・中学校は旅行先の選択の幅をもっと拡げてはどうかという提案です。それにより、生徒たちは日本文化・歴史の新たな発見をする機会に恵まれます。同時に、重要なのは旅行先の宿泊所や施設などに大きな経済効果が生れることです。

今、旅行人気の裏で、これを支えるべき地方の旅館やホテルなどは深刻な人手不足により、瀕死の状況のところが増えています。年間を通じ安定した旅行客の需要が見込めないため、従業員を抱えることが出来ないことが大きな要因です。そうした地域に予定をしっかり見込める修学旅行を定期的に組み込むことができれば、大きな福音となります。同時に学生たちに素晴しい思い出を作ってもらえるように、地域を挙げて観光資源の充実を図れば、更に地域の発信力は増すでしょう。旅行をした学校と旅行先との地域としてのつながりも深くなるのではないでしょうか。地域が思いやりでつながっていくために、修学旅行の行く先を見直してみることを提案します。

 

令和5年11月28日

震災機構

理事長 田中 潤