被災地は震災から9年後の春を迎えます。今年は、コロナウイルスの蔓延で、あの年以来の非常事態を感じる3月になってしまいました。

ところで、不特定多数の人々の公益を考え続ける身として、今回のコロナウイルス問題で心配していることがあります。日本におけるコロナウイルスの検査体制が極めて脆弱な現在、散発的な感染者の発生に応じ、その感染者が立ち寄った施設などは徹底的に除染され休業も余儀なくされています。それは、当然必要なことではあるのですが、どれだけ隠れた感染者がいるのか分からなくなっている現状で、感染が見つかるとそこだけが強く危険地域としてクローズアップされることに異和感を感じます。

感染者が出た施設、更にその地域は、特別な場所として注目されることで経済活動においても大きなダメージを受けます。こうしたことに遭遇した方々が今後どのような補償を受けられるのか全く分かりません。施設を運営する企業が立ちいかなくなった時、そこで従事する人々の生活にも重大なリスクが生じます。これについて政府が目配りしてくれるのだろうか大変心配です。

また、全国的に外出が激減する中で、3月の繁忙期を迎えた飲食店やイベント会社は大幅な売上減少が予測されます。その多くが零細企業であるだけに、1カ月の収入減が事業の存続にも直結し倒産を余儀なくされることも充分考えられます。経営者のみならず、そこで雇用されている方々は一瞬にして明日からの生活の糧を失ってしまうのです。ようやく正常な事業活動を始めた被災地の飲食業者は、内部留保も少なく資金的にも不安定な所が多数あります。こうした方々を直撃する外出自粛、会食中止の連鎖は経営に深刻な打撃を与えていくでしょう。公益的な観点から弱者への救済措置が公平になされるのか私たちは、政策をしっかり見守っていかねばなりません。

そもそも今回の事態の主因は、感染者が生じた場合のリスクについて何ら具体的な検証もせず、政府が安易に海外からの入国を認め続けたことにあります。初期段階で政府が最優先に国民全体の幸福のためにどうすべきかを具体的に講じることが求められていたわけです。結果的に、感染者の検査もままならず、感染者の発生に伴なう2次災害を放置してきた今までの政府の対応を鑑みると、公益を担うという責任意識を持つことの重要性を改めて感じてしまいます。

私たちは、今の日本の厳しい状況をしっかり見つめ、改めて気を引き締めて公益を担う責任意識を忘れることなく、被災地支援活動に向き合っていかなければなりません。

 

                                                       令和2年3月6日

                                            東日本大震災雇用・教育・健康支援機構

                                                      理事長 田中 潤