6月に大槌町の仮設廻りをした際に、今迄も度々お会いしている70代後半で一人暮らしの女性Mさんと、1時間ほど立ち話をしました。息子さんは公務員で別の地域で暮らしており、ご本人は仮設住宅に住みながら、軒先で細々と小売業をしています。一日に何人かの人が買い物に来、いろいろなお話もしていくようです。

今回初めて震災の時の話などもされましたが、ほとんどMさんが話し手でした。津波の恐ろしさ、損害保険を震災直前に解約していたため住宅再建に大きな負担を抱えていること、津波で流された自宅のあった場所とは遠く離れた所で空っぽの金庫が見つかったことなど、一つ一つ身につまされるお話でした。更には、つい1週間前に家の前で育てていた花の咲いているプランターが盗難にあったとのことで、やるせない思いのたけを伺いました。

それでも元気に毎日を送っていることが言葉の端々から浮かび上がってきて、温かい気持ちになりました。自宅再建や資金繰りの相談など「私でお力になれることがあれば」と、継続的に連絡を取り合うことを約束してお別れしました。

私たちのコミュニティー活動は、こちらから"見守りをする"という向き合い方だけでは、ご本人から自然にご連絡いただくことはとても難しいようです。良いことだからといってスムーズにコミュニケーションを作っていけるというわけにはいかないのです。少しずつ時間をかけて、一人暮らしの方とのパイプを築いていきたいと思います。

平成28年7月23日
公益社団法人 東日本大震災雇用・教育・健康支援機構
理事長 田中潤